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女房の官しなの事
執柄家
大上らふ
かけほの親王大臣の御娘など、この名にかうす、
むき名
上らふの名也、北の政所などはいはれずして、唯ならぬ人の名なり、
一のたい 御つま
これも上らふのかうする名也
小上らふ
これも小路の名、又二位三位大中納言とかうするなり、
中らふ 中少将などいふ也、左衛門のかみ、小かみは、小上らふかけたる名なり、
下らふ
侍従、小弁、少納言などは、下らふながら、中らふかけたる名なり、
うへわらは
これらは国名、よせある名などおつく也、さぶらふ名などあるべし、
とじ
これも内裏などのとじおなじ事也
此ほか
北のまん所
このかうは、執柄家にても、内裏より内々のせんじあり、
御だい
大かた北のまむ所などおなじ程の事也、このかうは、せんげなどなし、
御かた〴〵の名の事
北東御かたは上なり、南西は聊方角にては、おとりたる也、かた名とむき名とは、かた名はあが りたるやうに申伝へたるなり、
むき〳〵の名の事
かた名などヽおなじ
たいの事
一のたいは上也、つま二のたいなどは、いさヽかおとりたるなり、
こうぢの名の事 一条、二条、三条、近衛、春日、これらは上の名也、大宮、京極、これらは中なり、高倉、四条などは、小路の うちにもおとりたるなり、中らふの成あがりも、小路の名は付也、
大納言局 中納言局 左衛門督 帥 按察使 えもんのかみ
これらは上らふの付名也、此うちにも、あぜちなどは、いさヽか心ありてさがりたるなり、
一位局 二位局 三位局
これらはずいぶんの事也
小ざいしやう 小督 小ひやうえのかみ
これらはずいぶん、中らふ小上らふかけたる名也、
中将 少将 左京大夫 宮内卿 しんすけ 左衛門佐
これらは中らふの中にも、随分の人のなる也、総じて小の字お添てつくるは、あがりたるなり、
じヾう 少納言 小弁 国々の名
これらは下らふの名なり、じヾう少納言は、中らふかけたる名也、左右なくはつくべからず、国 国名は大かたなり、
伊予 はりま たんご 周防 越前 いせ
これらは国名にてもすぐれたる名也、内裏などにても、中らふかけたる名なり、
丹後 おはり みまさか 越後 びんご ぶんご 加賀
これらなどは、中程の国名也、大かた国名は、このほかおほし、相はかりてつくべし、
総じて新大なごん、権大納言など添たる、執したる官なり、唯又しんすけ、いままいりなどいふは、はじめたる人の名お、むずといひにくきおいふ也、新三位などは、しんおそへたれども、唯三位よりは聊劣りたる也、又小少将小弁などはしつしたるなり、此外うへわらはなどは、いろ〳〵の源氏さごろもの心にて、名お付るなり、さぶらふ名、うへわらはにてはよき也、大がいかくのごとし、さりながらこのうちにても、上下の事は、はからひて名おつくべし、あながちかみより、二位三位などには、せんげなけれども、位の名おつくることは、執柄より下へは、名にはからひてつくる也、たヾ又ひがし殿南殿などいふは、たかきいやしきにも有、去ながらたかきにては、御所のがうなどにもおとらざる也、御所のがうは、北の政所よりは心あるやうなり、いづれもそまつには申べからず、人のおしてはからひには有べからず、仙洞しつへいまでは、わか君御所などのがうあるべし、大臣家など成とも、御所のがうはあるべからず、心あるべし、人によるべきなり、政所はくわんばくの御母なり、