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貞丈雑記
二/人名
一天台宗の寺の僧の名に、民部卿兵部卿式部卿などヽ雲は、是お君名と雲也、他人より雲には、民部卿の君、兵部卿の君などヽ雲也、畢竟は喚名也、かの僧、民部卿式部卿の官に任じたるにはあらず、狩野家の絵師などの民部卿などヽ雲も是に同じ、僧に准じたる也、其根元お正せば、摂政関白の子の僧になりて、法印になりたるおば殿法印と雲、〈摂政関白おば 殿と称する故也〉左大臣の子の僧正になりたるおば、左大臣の僧正と雲、式部卿の子の法印になりたるおば、式部卿の法印と雲類、皆父の官お以て称する也、後代に至ては父の官に拘らず、百姓商人の子にても、天台の僧にだになれば、兵部卿治部卿などヽよぶ事になりたり、