[p.0800]
予章記
相州藤沢の道場は、一遍上人の御建立の地也、一遍と申は、先祖通信の孫、別府七郎左衛門通広の子、智真坊と雲也、故不断申通じける通治〈○河野〉も、ゆかりの色の藤沢に参て、落飾の由お望申ける、〈○中略〉此時迄随逐しける者、久万太郎左衛門尉通賢なるが、倩案ずるに、如此已断たるお継、興漸廃事は、併是藤沢の上人の御指南故也、吾以不肖身此便お仕事、頗天之幸也、我上人の御弟子と成て、結縁分の上にて大恩奉報ばやとて、鬢髪払去て、名おば万阿弥陀仏と賜ければ、二人禿丁黒衣おば著作錦衣故郷へ帰ける、