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続古事談
一/王道后宮
宜秋門院〈○後鳥羽后〉の御名のさだめありける時、兼光中納言、任子と雲ふ御名おたてまつられたりけるお、静賢法印申して雲はく、白氏の遺文に、任子行といふ文あり、しかもかれはことある文也、此御名いかヾあるべからんと申たりければ、九条殿、〈○藤原兼実〉もちいさせ給ひて、あまねく御尋ありけれども、さる事ありと申す人もなかりけるに、敦綱ばかりこそおぼえて、さる事侍り、もともさらるべき事也と申したりけれ、大才の人も、おのづからみおよばぬ事あり、ちからおよばざる事也、