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近世奇跡考

榎本其角伝寛文元辛丑年七月十七日生る、榎本は母方の姓と雲、本姓は竹下、〈一に竹内と雲、其爪庵の説也、○中略〉延宝二十歌仙、田舎の句合等に螺舎、あるひは螺子とあり、初名なるべし、〈一蝶たがかけの讃に、螺舎其角とあれば、後には号にもちいし歟、〉つづきの原に、麒角ともかけり、江戸鹿子、江戸図鑑等に、亀鶴とあるは誤ならん、晋其角と称せしは、易経に、晋其角(すヽむそのつのお)とあるにもとづけり、宝晋斎は米元章が硯に鐫たる文字也、其硯お得て、宝晋の二字、宝井晋子と雲によくかなへりとて、佐玄竜に扁額おかヽしめて、庵にかけ、則宝晋斎と号せしよし五元集に見ゆ、