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年々随筆

いにしへの人は、某麻呂といふ名多し、自称してまろといふも、まろはもとより自称なるにつきて、人の名にもおほくつくか、人の名に多かるゆえ、自称ともなれるか、もとすえは、しらねど、ひとつ根ざしの詞にはあるべし、近ごろまでは、天子の自称のやうに心えおりつるお、学問の道あきらかになりて、今はさしもあらぬにや、牛飼は、後々までも、丸といふ名つくうへに、天平勝宝の東大寺の奴婢籍にも、某丸といふ名多かり、