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伊予国順廻記

前大保木山〈新居郡氷見組○中略〉
〈庄屋〉文五郎
御拝地前よりの庄屋にて、一柳家時代の宗門改帳、並大身鎗一本お蔵む、其宗門改帳の内に、男女の名、常に異りたるお左に挙、
男名 千徳、相徳、峯徳、宮鶴、松千代、国千代、若松、どよむし、石若、五郎丸、こばん、千立、つごも、
右之外、右衛門、左衛門の門は、皆問(もん)の字に作る、門に作りたるはなし、右衛門左衛門は、官名なれば、旧は憚りて、問の字に書たる歟、
女名 半六、へんろ、しよぶ、太郎、次郎、みやいち、とくま、びしや、宮松、きくいち、たまる、さるま、のこ る、ひめ、じよろ、はないち、宮路、から松、わかま、さつき、ちよぼ、
右の通りにて、女の中に、男名付たるもあり、男名の中に、女名に似たるもあり、又歴々の名の様に聞るもあるは、往時喪乱の世、敗軍の将士、援に隠れ、後世子孫の名も、自然とみやびやかに付たる歟、