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玄同放言

姓名称謂
古書お読むに、時世は定かならすとも、人の姓名によりて、その時世も、大かたは推しはからるヽものになん、さればいにしへの人の名お、今より見れば、異なりとおもへども、当時はその名お同じうするものヽ、いと多なるも、今人の名に、某右衛門、某兵衛など、同郷合壁に、同名のもの多かるおもて、推してしるべし、大約六史に見はれたる搢紳に、同名多かる中にも、馬養〈うまかひ〉は、巨勢朝臣馬飼、〈書紀天武紀下〉伊与部連馬飼〈持統紀、又文武紀四年六月条下作馬養浦嶋子伝作者、〉藤原朝臣宇合、〈続紀巻八元正紀養老三年正月壬寅条下作馬養、其他作宇合、宇合即馬養仮字、俗読為乃記安比者非、〉小野朝臣馬養、〈続紀八元正紀〉文忌寸馬養、〈続紀十三聖武紀〉調連馬養、〈同上〉猪名真人馬養、〈続紀八元正紀、猪名又作為奈、〉粟田朝臣馬養、〈同紀〉船木直馬養、〈続紀卅三光仁紀〉この他猶あるべし、