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塩尻
三十六
一同時同名之類お、代酔編に多く挙侍る、我国とても、ふたりみたりは、同じ御代に聞え侍りけれど、近き世、神君御在世の時の如く、同じ名有事は、古しへの文にも見え侍らざるにや、好事の者に見せばや迚しるす、
酒井将 〓忠政 阿部四郎五郎忠政
松平与一郎忠政 伊奈筑後守忠政
森右近大夫忠政 本多美濃守忠政
松平摂津守忠政奥平信昌三男、為菅沼大膳大夫養子、賜松平称、
松平出羽守忠政
始は大須賀五郎左衛門、榊原康政の嫡男也、為大須賀康高之養子、賜松平称、
内藤仁兵衛忠政 鳥居左京亮忠政
小笠原右近大夫忠政 田中筑後守忠政

浅井備前守長政 浅野弾正少弼長政
田中兵部少輔長政 黒田甲斐守長政

酒井左衛門尉忠次 松平左近将 〓忠次
戸田三郎左衛門忠次 阿部四郎兵衛忠次
松平式部大輔忠次

大久保五郎石衛門忠勝 本多中務少輔忠勝
酒井宮内少輔忠勝 酒井讃岐守忠勝
是等時代同じき也少しの前後有べけれども、大様世お隔ざる人多かりしかば、分記し侍る、猶此外にも有しにやあらば追考すべきのみ
賢按、此時代、韻鏡お考て、人々名字お、五性に合せて付る抔と言事は、更になし先祖より名乗来 り候名乗字お、上下取替、或は人之名乗字の内お、好に従ひ付来る事故、如斯同名乗、多くありと 見えたり、