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草木六部耕種法
二需根
凡そ根お需めて作る者(○○○○○○○○)は、木類には有ること無し、肉桂(にくけい)と枸杞(くこ)の根皮お採は、即其皮お需るの事に属し、樟根(くすのね)より樟脳お採り、松根より松香(つまやに)お採り、漆樹根(うるしのきのね)より、零漆(たりうるし)お採が如きは、畢竟其幹に係れる事にして、根お需むるの業に非るなり、草類には根お需て作る者極て多くして、挙て記載すべからず、先づ其中に於て人世の有用最も多き者は、蔬菜に午蒡(ごぼう)、蘿蔔(だいこん)、胡蘿蔔(にんじん)、蕪菁(かぶら)、青芋(さといも)、紫芋(たうのいも)、車轂芋(やつがしら)、馬鈴薯(じやがたらいも)、蒟蒻(こんにやく)、薯蕷(やまのいも)、仏掌藷黄独(つくねいもかしう)、土〓児(ほどいも)、草薢(ところ)、甘藷(さつまいも)、甘露児(ちよろぎ)、百合(ゆり)、生薑(しやうが)、大蒜(にんにく)、薤(らつけう)、葱(ねぎ)、蓮根(はすのね)、水慈姑(くわ〓)、蔊菜(わさび)等あり、染草に紫根(むらさきね)、茜根(あかね)、鬱金(うこん)等有り、薬物に人〓(にんじん)、白朮(びやくじゆつ)、蒼朮(そうじゆつ)、大黄(だいわう)、附子(ぶし)、川〓(せんきう)、当帰(たうき)、白芷(びやくし)、地黄(ぢわう)、知母(ちも)、貝母(ばいも)、莪朮(がじゆつ)、良薑(りやうきやう)、黄連(わうれん)、黄〓(わうごん)、延胡索(えんごさく)、山慈姑(やまくわい)、天門冬(てんもんどう)、麦門冬(ばくもんどう)、天南星(てんなんしやう)、芍薬(しやくやく)、牡丹(ぼたん)、黄蜀葵(わうしよくき)、山奇来(さんきらい)、活蔞根(くわろうこん)、商陸(しやうりく)、天麻(てんま)、防風(ばうふう)、独活(どくくわつ)、羌活前胡(きやうくわつぜんご)、細辛(さいしん)等有り、其他甚だ多し、薬草は総て山野の自然生は気味の強きお以て、此お上品として此お貴重する事なんども、世上有用の多き、万分の一にも足るべきに非ざるお以て、多分に此お作り出して、豊饒なるに非ざれば、病者の難澀に及ぶ事必定なり、是故に国事は農政より急なるは無し、