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北辺随筆

葉守神(○○○) 枕草紙に、かしは木いとおかし、葉守の神のますらんも、いとかしこしとある、これは拾遺集に、かしは木に葉守の神のましけるおしらでぞおりしたゝりなさるな、といふ歌よりいふなるべし、其後にも、新古今集に、雨中木繁基俊、玉がしはしげりにけりな五月雨に葉もりの神のしめはふるまで、ともみえたり葉もりの神といふ神は、神書にみえず、これはかしは木の葉のおちぬがゆえに、葉お守りたまひて、おとし給はぬ神のおはしますらんとていふなるべし、されどかしは木にかぎれるは心えがたし、たヾいひならへるにしたがふなるべし、