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嬉遊笑覧
十二草木
世俗除夜に果樹の実のならぬに、一人杖お持て木のもとに行、ならうか、なるまいかとて打むとするお、又一人その樹に代りてならうと申ますといふなり、宝倉に、或時、婦にはかりて雲、君みずや柿木などいへるものヽ年ぎりせるには、節分の夕に、一人斧おとりて、此木おきらんといらなめば、今一人其木に代りて、明年より年ぎりせまじ、ゆるし給へなど、口かためする時は、必明年より年ぎりする事なし雲々、女南甫史に、正月元旦辰刻、将斧班駁敲樹、則結子不落、名曰嫁樹と是なり、又文昌雑録雲、楊州李冠卿所居堂前、杏一株極大、多花而不実、一老嫗曰、来春為嫁此杏、冬深忽携尊酒雲、是婚嫁撞門酒、索処子裾繫樹上、已尊酒辞祝再三、家人咸哂之、明年結子無数とあり、これ嫁樹の義なり、