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草木育種後編

雪霜忌避之事 凡園中の樹木、冬月雪霜の候、預め其法お施して、枝葉おして其凍威お防べし、花鏡雲、凡生果花盛時、逢霜則無実、しかのみにあらず、雪の為に枝お折り、芽お損ずる事あり、十一月の中に、園中の樹木は、弱き枝は下より竹おたて結置、又細き縄にて釣置べし、雪積りても折れる事なし、小木枝多きもの、杜鵑花(つゝじ)類、金松土蘇木(かふやまききやらぼく)の一種の類、縄にて巻おくべし、蘇鉄芭蕉類も立冬の頃より藁にてまくべし、又草類の盆栽其まヽ鉢お埋置て、春の彼岸比より堀り出してよし、地植のものはわら木葉などかけ置てよし、喜任〈◯阿部〉按に、或人の説に、山中のものは雪霜お除ける事もなくして、自然に勢よし、園中に移す時は煩はしといふあり、左にあらず、予冬月深山に行きたるに、葉落て根下に重り、一尺もかきわけて、漸く下に生ずる処雑草お得るなり、造物自然の妙にて、自ら根の霜雪お避くるなり、