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草木奇品家雅見

僧栄伝は東都澀谷金王祠の別当にして、宝暦の頃の人なり、奇品お弄、諸州の好人と贈答す、特に百両金(たちばな)の斑お愛して、後世金王斑と唱る物有に至る、又一年菊と辣茄(とうがらし)の長大生育お成すに、皆其丈二三丈に及、菊は黄英白葩煉燦として金玉盤お捧るがごとく、辣茄は紅緑実離離として、琅玗珊瑚お懸るがごとし、都下争趣てこれお見るに、数百歩お隔、屋上樹罅に其状認、実に一大奇観なりしと雲、始八丈島及崎奥(ながさき)には此法有、関東には之お長大生育の鼻祖とす、培養に長る推知べし、