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草木育種後篇

下種之事 喜任〈◯阿部〉嘗て諸木の実おうえ試みるに、各良非あり、今逐一左方にしるす、鳳尾松(もみ)、羅漢松(まき)、木こく、秋実の熟したるおとり、土に雑へ置、春分に畦に布てよし、羅漢松はとり蒔にても生ずれども、霜に痛む事あり、又暖国にては其心得ありてよし、肉桂樟(にくけいくす)類は実へきずお付、とり蒔にしてよし、鳥のはみかへしにてはよく生ず、はぜうるしは、牛に実お喰せ、其糞の中にあるお、糞と共に植ればよく生ず、櫧(かし)、柯樹(しい)、一位(い)櫧(かし)、檞櫟(くぬぎなら)の類は、実落たる時土に雑へ置べし、直に鉢へ蒔てもよし、実の皮と皮と付時は、中に虫お生ず、貯ふる時床の下などへ埋おくべし、鼠の用心すべし、春の彼岸の比より出し植べし、松の実は秋の彼岸の後に松毬(まつかさ)おとり乾かし、落たる〓おとり、砂に交へ置、春の彼岸の比まきてよし、根上りの小松お作るには、箱の下へころ土お入れ、上へあら砂おしき、其上へ細き土お入て蒔べし、根に叉椏(また)お生ずる故に、石おまたがせなどするによし、根一本になるは用ず、