[p.0044]
培養秘録

穀肥の用法お論ず 翁〈◯佐藤玄明〉曰、草木類の培養に用ふべきもの都て十二種あり、第一穀肥、第二苗肥、第三芝草肥、第四草木埋肥、第五草木腐肥、第六厩肥、第七草木灰、第八附( /あらぬか)肥、第九糠肥、第十油糟、第十一造醸物糟、第十二水藻是なり、能其土地の剛柔と、気候の温冷とお察し、作物お〓悦し、十分に豊熟せしむるお良農家の手段とする也、穀肥とは穀類お肥養に用ゆるお雲ふ、総て粳米糯米お始として、大豆、小豆、踠豆、禄豆、蚕豆、鵲豆( /〓んぐん)、大麦、小麦、蕎麦、黍、稷等、皆此お用ゆべし、然ども粳米糯米お糞培に用ゆることは、近来制禁となれり、凡そ穀類の実お生にて糞培に用ゆるときは、其滋潤温煖の性と、生気発達の勢とに因て、其作物の精神お、専ら茎葉と穂とに上湊しむ、故に能其茎葉お肥大らせ、殊更に其種子お十分に実せしむ、是其天性に従ふ法なり、然れば根お需て作る者には、穀類の肥お用るは無益なりと知るべし、