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草木育種

澆灌(こやし)并培養の事 按るに山野自然に生ずる草木は、実熟して自落腐煉すれば、則その物の肥となる也、冬木は葉繁て暑寒お厭、夏木は秋葉落て土お覆ひ寒お凌、是自然の理なり、しかるお実お採尽、或は葉お掃除などするは、理に逆もの也、故に手入培養の法お用ざれば生長せざる也、花鏡雲、人力亦以奪天功と誠に然り、又曰澆灌人之需飲食也、不可太〓、亦不可太飽と雲り、凡草木に用る肥二十一品あり、後に審にす、又人糞馬糞などの穢物お嫌ものあり、種樹書曰、花木有不宜糞穢者甚多、猶宜問用〓之、非其宜立稿と雲り、蘭、百両金(たちばな)、杜鵑(りうきう)、虎〓(ありどうし)、枇杷、杜衡(とかう)などに糞お用事お忌が如し、又神社の庭或は神前に供するは草木等にて、糞穢の物お用難事あり、かくの如き時は代に用る肥あり、干鰯(ほしか)、灰汁(はい)、油糟(あぶらかす)、酒粕等お合せ腐して用ば、大抵同様に肥るなり、左伝曰、蘋蘩薀藻之菜、可薦於鬼神と雲、これ水草にて、うきくさ、又もの類は糞汚に触ざる故、清潔にして神に供すべしと雲り、