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草木育種

除虫法〈并〉図 種樹書曰、種木無時、戴毛虫、於根下皮、以甘草末〓之亦佳、又曰〓月二十四日、種楊樹、不生虫、又曰、斫松樹、五更初斫倒、便削去皮、則無白蟻、又須択血忌日以斧敵〓之雲、今日血忌、則白蟻自出、又曰、元日天未明、将火把、於園中百樹土、従頭用水燎、過可免百虫食葉之患、又曰、園甫中四傍、種決明草、蛇不敢入、〈◯註略〉又曰、濯洗布衣、灰汁澆瑞香、必能去蚯蚓、且肥花、以瑞香根甜灰汁、則蚯蚓不食而衣垢又自肥也、又曰、柑樹為虫所〓食、取蟻窠於其上、則虫自去、又曰、果樹有蠹出者、以芫花納孔中、即或納百部葉、又曰、果木有虫蠹処、以杉木削小丁塞之、其虫立死、又曰、生人髟掛樹上、鳥不散食其実、又曰、桃李蛀者、以煮猪頭汁冷澆即不蛀、又曰、果樹生小青虫、〓蜻〓掛樹自無、按に、白蘞末置花根下、辟虫易活、凡樹おうへかへる時、根の下へ大蒜一つ、甘草少ばかり入て植ば、久く虫お生ぜずと、花鏡に見へたり、凡草木に生る虫甚多し、其内大に害おなす虫おこヽにしるす也、土中に古根芥などあれば、虫お生る也、間お遠く植て、風お入る様にすれば、虫少し、木の類は古枝お切すかし、風お入べし、又肥へ烟草の茎お切まぜて用ば、虫生ぜず、黒小(ねきりむし)地蚕又芽きりむしとも雲、其形いもむしに似て小く、鼠色なり、早春の頃土中に居て、朝など出て、草の芽お食、よく見てひろふべし、又土中に蠐螬(ぢむし)あり、此類は皆草の根お嚙切ときは忽枯る也、甚害おなす、根廻りの土中お尋て取捨べし、虫多き時は石灰お水にてとき澆ば死す、暫ありて其石灰に水おそヽぎ去べし、木蠹虫(きくいむし)は形長く色黒し、林檎無花果などの木の心お喰、皮の所へ小き穴おあけ、鋸屑の如きものお多く出す、此穴へ硫黄お粉にして入てよし、又針金お穴より入て突殺もよし、又〓炮の焰硝お、〓紙により込、穴へさし入て火お付れば、忽穴の中へ火気通じて、虫残ず死す、又虫の穴へ灯油おさしてよし、此虫諸木に付ものなり、草木ともに風入あしき所には、木虱(あぶらむし)又ありまきともいふ虫、多新葉の所へ付、日々にふへてひしととり巻ときは其芽枯るなり、其時は、虫の聚り居る所へ、烟草の水お度々澆てよし、又鰻鱧の骨お焼て煙(えぶし)てよし、又麦藁の灰おふりかけてもよし、又常の灰にても度々振べし、あぶらむし生ずる時、必蟻多く聚り、虫おふやす故、蟻お払捨べし、又鼈甲お其辺へ置ば、蟻集るお遠く持行て払べし、又砂糖お置、蟻お聚て取捨もよし、花鏡に雲、蟻穴以香油或羊骨引出之、又蟻作窠須置一浅盆坐〓水、使蟻不〓能渡といへり、こ虫といふものもあり、百両金(からたちばな)、紫金牛(やぶかうじ)、柑、橘、橙類の葉のうらに、砂の如小き虫多付ときは、葉落ちて傷なり、つき初りなれば、刷毛お以て水お澆洗てよし、又柑橘建蘭類に疣の如にして、扁虫お生ず、群芳譜に、是お蘭虱といふ、これお去法は、魚洗汁おそヽぎ、或は大蒜お摺て水に解、筆お以て洗べし、土中に生ずる糸虫と雲あり、形糸の如にして、長さ二三分、色白し、是肥強して湿熱より生るなり、草の根お腐かすものなり、集り居る所お土ともに取捨てよし、桃樹に生ずる小き蠐螬(いもむし)あり、初二分ばかりにして色薄青し、掃帚にて払べし、此虫桃実の皮よりくひ入て実お喰、螟蛉(なむし)は菘蘿葡芥などに付青虫なり、毎朝拾捨べし、蠐螬は夏中大なる蝶飛来て、葡萄薯蕷類の新枝へ卵おうみ付て去なり、二三日めに一二分のいもむしとなる、青きもの茶色のもの黒きものあり、生長すれば指の大さになり、脊に星ありて眼のごとし、橘虫(ゆむし)と雲あり、橘柑橙柚茱萸椒類の香ある木に多し、これも蝶飛来て卵お新枝へ著る也、是は頭大にして蚕の如く、此お挟ば黄赤色の角お出し、甚臭し尺蠖(志やくとりむし)も諸木に生ず、よく見て拾取べし、〓虫(けむし)に種々あり、梅桃李林檎などの枝に卵お著置なり、形鮫のごとし、冬の内取捨べし、此卵三四月頃かへりて虫となり、木の又へ巣おかけ、数百あつまりて、新葉お喰ふ、其形あさき色にして島あり、是お取法は、灯油お筆か布に浸、虫の巣お拭取べし、又油おたヾ澆てもよし、虫忽死す、樹の根もと或は割竹の内、又は板屏壁などの日陰に、綿の如にして長く産付たる卵あり、削さるべし、捨置ときは春になりて、皆小き毛虫となる也、此類に毛多くありて、脊に金色の光あるお、半夏太郎(はんげたらう)といふ、枝或は樹の皮に居るなり、又八九月頃桑桜あり、あめかしわ類の木、又草の葉にも生ずる桑樹虫(すむし)あり、初は蜘蛛の巣の様に見ゆ、葉お喰、筋おのこして、其葉茶袋の如し、巣の小なる時、枝お切捨べし、捨置ば冬に至て虫皆根もとに下り、枯葉の下或は土中に寒お凌て、春に至て草木の芽出お喰、又桃梅林檎等の実お食、大に害おなす、林檎海紅等に一種の毛虫お生ず、三四月頃一葉巣になり、段々ふへて一枝皆蜘蛛の巣の如になり、葉お残さず喰尽、巣の小なる時、葉お取、枝お剪て遠く捨べし、其まヽ置時は、枯木の姿となる、或は雲、此虫後にみのむしとなりて、外の木へ移、葉又は実お喰害おなす、菊虎(きくすい)は形蛍に似てほそ長し、菊艾類の宿根より生ずるといふ、故に菊は古根お植うべからず、四月頃早朝に出て、菊艾類の若ばへお吸からし、跡へ卵お産置なり、其吸たる跡二け所横に筋あり、下の吸めより折取て、茎お二つに割ば、中に黄色の長き卵あり、其まヽ置時は、菊の心に喰入て、蛀(ずむし)となる、秋になりて菊俄に枯るもの也、さんせうむしは、形てんとうむしに似て黒く甲羽あり、夏の頃瞿麦の花お喰、又柳に集りて葉お食ふ、又酸漿にも集り葉お食もの也、節々払べし、蛞蝓蝸牛(なめくじまい〳〵)は草木の葉お喰事、毛虫の如し、遠へ捨べし、鼹鼠(むぐらもち)は草木お根お掘あげ害おなす、珍重なる植物は、竹にて簀おあみ、土中に埋、其中に植ば来らず、又妙法あり、海参(なまこ)お切て所々へ埋置ば、遠く逃去と雲、なまこは虫お除ものなり、鉢うえ類に蚯蚓升ときは、水抜悪なり、植物くさるものなり、無患子(むくろじのみ)の殻お煎、其汁お澆ば皆死す、又生なる小便お澆ば、みヽず逃去もの也、跡へ水お多くそヽぐべし、