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草木育種

登盆(はちうへ)の事〈附り〉養花挿瓶の事 按に盆栽は土乾ず湿ず、よく下へ水の抜るお第一とす、陶盎(はんど)にても、又花盆(せきだい)にても、水抜の穴肝要なり、其穴は漏斗の如、少も水のたまりなきおよしとす、穴の所内へ引込たるは、廻りへ水滞て悪し、穴の所低がよし、扠穴お覆に、何の〓器にてもくだき、其まヽふせて穴お覆べし、文蛤などは鉢によりて水抜悪事あり、花鏡に建蘭お植る法に雲、用盆先瓦片塡底後以煉過土覆上と、これ妙法なり、蘭、百両金などお鉢へ植るには、盆の底の穴お大くして、其上お覆に、赤土の黄めにて、かたまりたる土おあらくくだきふるひて、其篩に残たる粗土お入て植れば、水よく抜て根腐事なし、物によりて植る土へ、合肥お切まぜたるもよし、総て植る法は、まづ陶盎お下に置、植木の根元お以て、はんどへあてがひ、四方より土おさら〳〵と入、土一盃になりたる時、前後左右へ暫く動べし、土の空虚のなきためなり、植て一両日多水おそヽぎ、或は大雨に逢事お忌、土のかたまるお恐るなり、肥お嫌草木は、年々土おあらたに入替てよし、又肥お好物は、土の乾めなる時、先土お箸の様なる物にて和げ置、よくねりたる肥お根廻りへそヽぐべし、又鉢植お地に置て、久く居つく時は、水抜の穴より、蚯蚓升りて、鉢の内にすむときは、必湿てついに根腐する事あり、節々置所お替てよし、其蚯蚓お去る法は、後に見ゆ、又蘇鉄、松の類は、棚にのせ置ても、まヽ蟻の付事あり、早く土お取替てよし、