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草木育種後編

盆栽之事 考盤余事雲、盆景以几案可置者為佳、其次則列之庭余中物也、花鏡曰、至若城市狭隘之所、安能比戸皆園、高人韻士惟多種盆花小景、庶幾免〓俗、然而盆中之保護灌漑、更難於園甫、花木燥湿冷煖更煩於喬林、喜任〈◯阿部〉按に、盆中は実に土力薄くして養ひ難し、殊に千山万野の奇草異木お盆栽にし、一架に置て愛玩する故に、肥水時お得、乾湿其性に従はざれば立所に枯稿に至るべし、灌園先生雲、盆はすやきお上とす、土燥く故に根腐朽事なし、盆は土の上に置時は、上半分は乾けども、半は湿りあり、外気お内へ透す故なり、但夏月は度々水お澆ぐべし、冬は鉢のまヽ土中へ埋め、春に至り堀出してよし、鉢は粗き土にて焼たるもの、内外気通ず、さる故に樹木自ら瘠るものなり、又盆の形によりて燥湿あり、上闊く下狭く浅きは陽気お含むゆえに植物によし、上下同して深きは陰気お含むゆえに湿易く、植物腐る、上狭く下広きは湿り強く、又抜く事なりがたくして甚悪し、都て鉢へ植たるは、当ぶんは雨お厭ふべし、植て直に雨にあたれば、土かたまりて根くさるなり、又盆栽は置場所肝要なり、たとへば南方の暖国より来る物は、南風おうけて亢陽の処に置てよし、又南方にても陰地にあるものは、暖処の内にて日およけたるがよし、喜任曰、寒地より来るものは北風お受て、盛夏は凉処に置べし、故に暖国の草木冬月枯稿事は人多知るといふとも、寒地の産物夏月いたむ事は知る人希なり、