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農業全書

諸樹木栽(うゆる)法 凡木おうつしうゆるには先念お入れ、東西にしるしお付て、其方角お替ふべからず、大きなる木は枝のふとき分は程よく切去、梢おも長く切捨べし、〈かやうにすれば木の上の体すくなくなり、枝葉もうすくなるゆへ、風にもさのみうごかず、又根いたむといへども、木の上(うへ)の体すくなくなり、根の方の力つよきゆへ、木いたみて枯ることなし、〉凡木お種るには第一ほりとる事に念お入べし、もし横根遠く出てほりがたくは、大なる根は能比より伐べし、〈大なるは鋸小さき木ならば、刃のよき道具にてきるべし、〉 根にはちお付る事、木のかつかうより、少しはちお大く付べし、 大なる木ならば、此次の木お種る所に記すごとく、鳥居お立、中に釣上るやうにすべし、かくせざれば木の根お底まで掘まはしたる時、そこの立根上のおもりにおされて、おるヽ事あればなり、猶細き木は夫に及ばず、 はちお包む事、古きこもかたはらの類お、一尺ばかりに切て、残らず押あて、其上お縄にて念お入、幾所も多くからげ、少も土の落ざるやうに包むべし、 木の枝に印お付て、前生たる時の東西の方角かはらざるやうに種べし、 木の根のかつかうより種る地お、ひろく深くほるべし、