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地錦抄

植木荷物遠国持様 海陸共に籠に入たるがよし、せきだい、又は桶に植たるはとりまはしわろく、おもくしてしかも水のかげんしられず、箱の内に水滞て根くさる事なり、籠は水多くかけても走不(はしりて)滞とて、根によきほどしめりおふくみ、とヾこほらずしてよし、陸荷は壱駄に四つ荷に拵へたるが取まはしよし、二つ荷はおもくてわろし、籠の大さかつかう、共に大方蜜柑籠よし、〈みつかんお入れて来る籠たくさん有物なり、なくばそのごとくこしらへて用べし、〉籠の内にいとだてむしろお敷、植木壱本宛うちわらお以て枝おまきよせ、段々入、多く木数お入るほど友性にてよし、土も間々少入たるがよし、水苔にてつめる、〈所により水ごけ才覚なりがたく、なくば打わりおやわらかにして、こけの様にもみて入、少もこけにかわることなし、〉籠の上おわり竹にてまろかごにして、ござか又いとだてむしろにて、日のさヽぬ様におほひ、春秋は七日に一度宛水おかけ、夏は三日五日に一度宛水おかくる、舟荷ならばしほ気なき水お吟味すべし、但根本へばかりかけべし、葉に水かくる事おきらふなり、雨ふらば葉へ水のかヽらぬやうに、よく〳〵おほいすべし、