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草木育種後編

樹木お伐る事 草木黄落して山林に入ると、樹木お伐て人用と為といふとも、又其時にあらざれば伐る事なかれ、空しく其材おそこなへばなり、月令にも孟春樹木発生の時なれば、伐木お禁止せり、都て財お用ふるは秋分より後に伐るべし、小寒前別してよし、春伐るは軽く、秋冬伐る者は財重し、実すればなり、又葉お愛するもの盆栽など枝おきり込は三月迄なり、かき植こみなどは梅雨の中よし、土用の芽は葉寒に痛まずしてよし、灌園先生雲、木お伐鋸は歯お図の如くすべし、下の図の如くなるは悪し、木の屑歯の間に夾りてわるし、又高き木お伐るには、上より段々伐りて下るなり、大枝おきり落して、下の物傷むと思ふ時は、長き綱お付て上の叉へかけて、伐りて後つなおゆるめ、段々と下ろすなり、又根より伐る時は、木へ綱お付て遠くにて挽なり、右へ倒すには右半分きり、左半分は少上お切るなり、きり口の合はぬ様にするなり、又諸木ともに皮お剥ぎて用ふるものは、春分より秋分迄よし、此間は皮剥易くしてよし、杉木扁柏黄蘖山椒等なり、喜任〈◯阿部〉按に、奥州の辺にてしなの皮お剥ぎ用ゆるには、立木のまヽ下お切りまはし、又竪に切りて其のまヽ剥ぎ、段々と遠くにて引なり、根より梢まで剥るなり、これお水に浸し布に織り又縄とす、