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桃源遺事

一西山公むかしより、禽獣草木の類ひまでも、日本になき物おば唐土より御取寄被成、又日本の国にても、其国に有て此国になきものおば、其国よりこの国へ御うつしなされ候、覚し召末にしるす、 草之類 朝鮮人参〈江戸駒込の御屋敷、并水戸にも御植候、〉 薩摩人参 蘭 葵〈加茂のまつりにかくるあふひなり〉 けんやう草 落花生 唐鬼灯 ろうさ〈一名はまたぶ、俗雲はまなすび、〉 唐ちさ〈又雲たうちしや〉 唐芥子 黒葡萄 阿蘭陀茄子 はらすまれいな〈一名ろうすまれいな〉 麭橘(さぼん) 朝鮮茄子 へんるうだ〈一名へんあるうた、俗雲るうた草、〉 日蔭蔓 草蓮華 糸蓮花 つの蓮華 金糸蓮 唐蓮〈紅白〉 烏芋(くろくわい) ふつかう草 蓴菜〈水戸城下、及御領内所々の堀、又西山の池へ御はなち候、〉 南部薯蕷 何首鳥 水松 眼茄 昆布〈松前の海より御取寄、大津浜那珂湊へ御はなち候、〉  若紫〈此草は西山の山中へ出生仕候お、西山公はじめて御見出し被成、わかむらさきと御号候、二月に花咲、〉 浜木綿(ゆふ)〈潮来の浜に御座候へども、人不存候、所にては浜芭蕉と申候也、西山公御見出し候より、人是お存知候、〉 木之類 難波早梅〈咲やこのはな冬籠とよみし梅也〉 玉蘭 黒梅 江南所無〈梅也〉 木犀〈又雲かつおの木〉 菩提樹 しで辛夷(こぶし) 娑羅双樹 雨椿(あまつばき) 紀州熊野杉 仏手柑 臘梅 柚山椒〈青柚の香に同じきがゆへに名とす〉 榲桲(まるめる) 冬山椒 そなれ松 唐杉 白木蓮雪下〈躑躅也〉 やしやの木 めいさ かきう 果李(くはりん) 木楼子 楊梅 新羅松子 藤松 会津林檎(りんきん) 林檎 沙菓(りんご) 有檎橘(みかん) 咬〓吧橘(しやがたらみかん) 紀伊国橘 大殿堂柚 岩梨実 赤梨実 まては椎実 白輪柑子 無花果 巴旦杏 唐川練子 鉄樹(そてつ)桐油木〈此実雨具の油によし〉 香椿(ひやんちん)〈よく諸毒お消事妙也〉 唐枸〓 竜眼肉 桐〈俗雲唐桐〉 りやうぶ〈京都にては一名常若、常州にてははだかぼう、〉 櫨〈一名山漆、俗雲はぜの木、讃岐より来、実は蝋に宜く、木は弓に用る木也、〉 椶櫚竹 鳳凰竹 肉桂 甘蔗(さとうたけ) 胡椒 きんめい竹〈是は自然と江戸駒込御屋敷に生〉 瓢木(ひよんのき)〈葉はもちの木に似、其実瓢箪の如し、常磐木也、〉虎ふ竹 要木(かなめ)