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大和本草

論物理〈◯中略〉 四生〈◯中略〉植物四生あり、挟(さ)して活くは胎生類也、実まきて生するは卵生類也、荷芡などは湿生也、菌は化生也、又曰、植物皮お去ば枯、気在外也、動物は内敗ば死、神在中也、又曰、動物天に本づきて頭上にあり、呼吸気お以てす、気お天にとる也、身温なり、植物は地に本づきて、根地にあり、升降以津、津お地にとる也、体ひやヽかなり、〈◯中略〉 凡諸木、春至則萌芽お生じ、夏は枝長じ、秋は葉枯れ、冬は葉落ち実熟す、是陰陽の生長、収蔵の時に順ふ常理也、葉の堅厚なる木は秋冬葉不凋、常に葉あり、草も春生、夏長じ、秋実のり、冬枯るヽは常理なり、又草には春不生して夏秋冬生ずる者多し、夏生ずる者は、秋海棠、雞冠花、莧、薑、及諸竹等なり、又秋生じ冬春長じ、夏枯るあり、夏枯草、水仙、菘、蔓菁、薺、菠稜、大小麦等是也、是陰気粛殺の時生じ、陽気生長の時枯る、草木春夏花さく物あり、秋冬花さく物あり、一年の内四時花さかざる時なし、就中春さく物多し、夏秋次之、冬さく物は希なり、冬花さくは、隻梅、山茶、海紅、寒菊、枇杷、水仙、臘梅、迎春花等なり、秋冬は霜雪に百草千樹皆枯る時なるに、此等の花栄開く事性異なり、董仲舒曰、葶藶枯于仲夏、欵冬華于厳冬、韋応物が詩に、霜露悴百草、時菊独妍華、林和靖が梅花の詩に、衆芳揺落独暖妍と雲へるがごとし、 諸の草木、百穀の果実多くは秋熟す、又冬にいたりて熟するあり、橘、柚、柑子の類是也、夏熟するあり、桜桃、枇杷、蚕豆、大小麦、豌豆、瓜、苺等是也、隻春熟する物まれ也、棗は夏に至り葉お生ず、ゆづり葉は春至りて葉おつ、百物の性各ことなる事如此、自然の理なり、学記曰、大時不斉とは此之謂也、〈◯中略〉 漢名未詳類 穀類(○○) 鶉豆 隠元豆 菜類(○○) 山葵(わさび) 花草類(○○○) おかかはほ子 ほとヽきす 福寿草 草棣棠(やまぶき) 三波丁子 草牡丹 白粉花(おしろい) 小藤 あつもり 熊谷 草下毛(つ) 桜草 えび子 一花草  蔓草類(○○○) 正木のかづら すヾめ瓜 高蓼 しほで 松ふさ 海草類(○○○) つるも 索麪苔(のり) おご なごや 海羅(ふのり) 鳥の足  水草類(○○○) 沼よもぎ 河薀(かはもづく)  雑草類(○○○) たからかう 観音草 もじずり しやう〴〵ばかま 張良草 樊噌草 こい草 しヽやき草 しヽかくれゆり 浜木綿(ゆふ) 雁足 大根菜(な) 蛆(うじ)草 爾許(にこ)草 小々妻(さヽめ) はふてこぶら はくり 岩藤 葉がら松 草はぎ かにとり草 岩蓮花 のこぎり草 猫草 さぎくさ 岩菊 かうわう草 虎の尾 かやつり草 丁子草 鉄線花 梅ばち そば菜 杉菜〈土筆〉千振 おとぎり草 かたこ 唐柿 菌類(○○) 金菌 松露 山松露 鼠菌(ねずたけ) 針菌(たけ) 舞菌(まひたけ) しめじ 土栗 果類(○○) とちの木 岩梨 和活力柚 園木類(○○○) いざり松 白丁花 梅もどき もくこく びやくし ひむろ 花木類(○○○) 彼岸桜 花丁子 鳥の足 下つ毛 うつ木 雲柳鈴掛 雑木類(○○○) 八手木 ちしやの木 三また栂 たぶの木 ひヾ はヽその木 犬樫(かし) 玉みづき へらの木 玉葉 はいの木 とびら 肝木 山灯心 たんがら かんひ〈楮類也〉 いちぢく〈非無花果〉 黒もじ ふくら 浜もくこく 浜木蓮 うばしば 胡麻木(ぎ) けらの木 犬椶櫚