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木は、きと雲ひ、古くは、けとも雲へり、本草家は、分て香木、喬木、灌木、寓木、苞木、雑木の六類と為し、梅、李、桃、栗、梨、柿、林檎、橘、枇杷、胡桃、無花果、秦椒(さんしやう)等の果実お主とする木本は、更に、五果、山果、夷果、味果等の名お以て之お類別せり、 木の効用極めて大なり、神代既に杉及び樟お以て船舶お造り、檜お以て宮殿お造り、柀お以て葬具お作るの材と定めしことあり、又果実お採食し、或は此お以て醸酒の料と為しヽことも、同時代に見えたり、而して桜、梅、桃、牡丹、海棠、椿等は、其花の美麗なるお以て、榊、松及び雞冠(かへで)木、衛矛(にしきヾ)等は、其葉の常に緑なると、紅色お呈するとお以て賞せらる、其他、桑の養蚕に於る、漆の塗料に於ける、楮の製紙に於ける、茶の飲料に於ける、樟、桂、伽羅木等の香料に於ける、肉桂、竜眼、棗、橙、石榴、崖椒等(いぬざんしやう)の薬料に於けるが如き、木類の利用せらるヽもの、殆ど枚挙に徨あらざるなり、