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傍廂
後篇
松の花(○○○) 我〈◯斎藤彦麿〉若き頃、田中勇甫和棟が許に行たる折ふし、竈神に奉らんとて、花売老女のもて来たる小松一もと買ひたるお見れば、小枝の傍に、隻一つ花咲けり、白小花にて、榊花、橘、柑花などの如くにみゆ、さることある物にや、我は始めて見たり、時珍雲、二三月抽〓生花、長四五寸、采其花蘂為松黄、食物本草注に、松花、一名松黄、味甘温無毒雲々、