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江戸名所図会
十七
時雨岡(しぐれのおか) 同所〈◯根岸〉庚申塚といへるより三四丁艮の方、小川に傍てあり、一株の古松のもとに不動尊の草堂あり、土人此松お御行(おぎやう)の松と号、来由は姑くこヽに省略す、〈一に時雨(しぐれ)松ともよべり〉 回国雑記 忍ぶの岡といへる所にて、松原のありけるかげにやすみて、 霜の後あらはれにけり時雨おば忍びの岡の松もかひなし〈道興准后〉 〈按に忍(しのぶ)の岡(おか)といへるは、東叡山の旧名なり、此地も東叡山より連綿たれば、回国雑記に出るところの和歌の意お取て、後世好事の人の号けしならん歟、〉