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倭訓栞
前編十二須
すぎ 杉お訓ぜり、新撰字鏡に杉とも見ゆ、日本紀に、榲おもよめり、集韻に杉也と見ゆ、直(すぐ)に生ふるもの故に名とするよし万葉集抄に見えたり、げにもはら神木とし、正直の表物なれば、日本紀にも、石上振之神榲、万葉集にも、三諸の神すぎなども見えたり、されば我邦の産まされる事、合璧事類に見えたれば、もと此邦の産にや、本草にも、倭国に生るものお、倭木といふと書せる也、神名式には棒もよめれど、こは〓字の誤にて、訓もぬぎ謬てすぎとなる也、俗に椙字およむは、三代実録に見ゆ、榲お訛りたるなるべし、