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重修本草綱目啓蒙
二十三香木
杉 まき〈古名〉 すぎ〈和名抄〉 一名参木〈格古要論〉 径木〈女南甫史〉 紗木〈通雅〉 刺杉〈物理小識〉 刺斗〈通雅葉の名〉 古名まきと雲、故に古書にまきのとヽ雲は、杉戸のことなり、大和本草に雲り、今俗に水桶等に用ゆる木おまきと呼ぶは、くさまきの略にして、漢名羅漢松なり、其材杉に似て臭き故くさまきと雲、すぎと雲は直(すぐ)の義なり、木理直なる故なり、〈◯中略〉又丹後及若州海辺には土中より掘出す杉あり、色紫黒器物に造り甚香気あり、これお子ぎと呼ぶ、物理小識の老杉なり、又相州箱根湖中より出る神代すぎは色淡黒なり、人用て器物とす、これも亦老杉なり、 増〈◯中略〉又神代すぎは物理小識の老杉にして、香祖筆記の沙板なり、年久しく泥中沙に在て、土気の為めに滋せられて、土木の両性相浹して、久お歴て壊れざるものなり、これに同名あり、附方に老杉と雲は、古き杉のことなり、又じんだいすぎお陰桫とする説は穏ならず、檐〓雑記雲、密箐中有一種陰桫者、其木横生土中、不見天日、有枝無葉、在泥沙中、自生自長、世莫之知也と雲は、うもれぎのことにして、即雲南通志の木煤なり、即所謂泥沙中自生自長のものにして、神代すぎの山中自生の大樹泥沙中に倒入するものに異なり、木煤は石炭の条に詳に弁ず、