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紀伊続風土記
物産六上
金松(まき)〈酉陽雑俎、和名抄末木、披の字お用ふるは非なり、柀は杉の一名なり、新撰字鏡槙おまきと訓ず、真木の字お二合したるなり、又万葉集に真木とあるは、多く扁柏およめるなり、此まきにあらず、今も木曾にては扁柏おまきといふと聞けり、〉 高野山の名品なるおもて、俗に高野まきといふ、一山の林中に多く、中にも、奥院、山の南蓮花谷、五大堂より七八町許、東峯の尾に数千の金松森々として、中には一根に数十本叢生して、竹葦の生ずるが如きもの多く、千本槙といふ、空海の手づから植うる所といひ伝ふ、其材大なるは、堂宇或は器物に作りて一山の用お足し、其木皮お剥ぎて縄に綯ひ、諸国に運送して利益お得る事大なり、