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草木性譜

柏 百木の長とす、深山の産なり、其嫩時枝条稠密、数十歳お経れば独出、其枝横斜し、甚だ長じがたし、多寿にして松と寿お斉す、葉面葉背其色同じ、春時細小花お生じ、実お結ぶ状小鈴の如し、霜後に至て四裂す、小子あり生じがたし、凡万木皆陽に随ふ、然るに此枝西に随ふ、是其性なり、蓋陰木なるべし、旧説に、樵夫山に入て東西お失すれば、柏お看て知ると雲ふ、又扁柏( /ひのき)〈女南甫史〉花柏( /さわら)〈本草綱目〉竹柏( /むぎ)〈同上〉檜柏( /いぶき)〈同上〉刺柏( /びやくしん)〈本草〓言〉羅漢柏( /あすなろ)〈山東通志〉左紐柏( /びやくだん)〈事物紺珠〉等は皆柏の一種なり、瓔礫柏( /いとひは)〈秘伝花鏡〉矯檜( /はひびやくしん)〈事言要玄〉は其類属中の一種なり、最扁柏( 〓ひのき)お貴とす、即和国の良材なり、 本草綱目釈名雲、時珍曰、按巍子才六書精薀雲、万木皆向陽、而柏独西指、蓋陰木而有貞徳者、故字従白、白者西方也、