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重修本草綱目啓蒙
二十三香木
柏 かへ〈和名抄〉 このてがしは 両面 はりぎ〈土州〉 一名百木長〈事物異名〉 蒼官 阿剌孫〈共同上蒙古名〉 百花長〈事物紺珠〉 仙薬 浅色沈〈共同上〉 参天〈名物法言〉 鬼廷〈〓博物志〉 鞠〈通雅〉 剛柏〈書叙指南〉 扁松〈訓蒙字会〉 実一名錬形松子〈薬譜〉 柏の類多し、凡そ単に柏と称するは、側柏、扁柏お通じて言ふ、方書に柏と称し、柏葉柏子仁と称するは皆側柏なり、故に本条も亦然り、側柏(○○)はこのてがしは(○○○○○○)なり、葉そばだち生じて掌お立るが如し故に側柏と雲、其葉面共に緑色、故に両面と雲、万葉集十六巻に、奈良山の児手柏のふたおもにと読めり、〈◯中略〉側柏は西に向ふて枝お出す、故に樵夫山に入り、若し方角お失すれば、この枝の向ふ方お見て東西お知る、因て土州にては、はりぎ(○○○)と呼ぶ、釈名の註に引ところの埤雅の説に合へり、側柏の一種、俗に千手(○○)と呼ぶ者あり、葉多く叢生し、多く手お立るが如し、漢名千頭柏、一名仏手柏、共に本草徴要に出づ李時珍、柏の品類お分つこと詳なり、子の形状お説くこと殊に明白なり、この子即ち薬用の柏子仁なり、別録に四時各依方面采陰乾と雲ふは、本草彙言に、如采葉須随四時建〓方、春採東、夏採南、秋採西、冬採北、取其得月令之気也と雲へり、〓の説に花柏葉と雲ふはさわら(○○○)なり、叢柏葉と雲ふは即ち千頭柏(○○○)なり、有子円、葉は側柏なり、時珍の説に、柏葉松身者檜也と雲ふは、すぎびやくしん(○○○○○○○)なり、略してびやくしん(○○○○○)と雲ふ、一名百葉仙人、〈事物紺珠、〉刺柏、〈通雅、〉栝子松、結子松〈共同上〉園柏、〈名物法言〉檜松、〈訓〓字会〉この一種に、木直立せず、地上に延く者あり、はひびやくしん(○○○○○○○)と呼び、又じやぎ(○○○)と呼ぶ、漢名矮檜、事言要玄に出づ、又松葉柏身者樅也と雲はもみのき(○○○○)なり、一名鳳尾松〈通雅〉又松檜相半者檜柏也と雲ふ、いぶきびやくしん(○○○○○○○○)なり、略していぶき(○○○)と雲ふ、又鎌倉いぶき(○○○○○)とも雲ふ、鎌倉の名産なる故に名く、木色赤し、故に俗にみきあか(○○○○)と雲、女南甫史に、血柏の名あり、一名檜尖、〈同上〉二色檜〈通雅〉又黒いぶき(○○○○)あり、葉黒色お帯ぶ、又はひいぶき(○○○○○)あり、地に臥して矮檜の如し、又竹葉柏身者謂之竹柏と雲ふは、なぎ(○○)一名ちからしば(○○○○○)也、葉の形竹葉の如くして短く、厚して対生し、深緑色、冬も凋まず、花は松花の如く、実は円にして大さ五六分、地に下して生じ易し、和州の春日若宮八幡の山に甚多し、大木もあり、 増、側柏は、夏月葉間に花お開く、松花の如し、後に実お結ぶ、長さ六七分、闊さ五六分、円くして外に軟なる刺毬(いが)ありて蓖麻(とうごま)子毬の如し、中に麻子の如き実あり、一方尖りて紅花実の如し、これお破れば中に仁ありて油多し、即ち薬用の柏子仁なり、又側柏葉お薬用となすには、千頭柏お良とす、又女南甫史に、扁柏に黄柏の名あり、きはだと同名なり、