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玉勝間

むろの木 田中の道まろがいへりしは、万葉の歌によみたる室の木といふものは、今もいづこにも多くある物也、美濃の不破郡、多芸郡などにて、ひむろ(○○○)とも、ひもろ杉(○○○○)ともいひ、伊勢の員弁郡、桑名郡のあたりにて、たちむろはひむろ(○○○○○○○○)といひ、尾張の羽栗郡にて、ねずむろ(○○○○)とも、べぼの木(○○○○)とも、むろ(○○)ともいへり、すべて山におほき木にて、地にはふと、高くたつと、二くさ有て、はふ方には大木はなきお、立るかたには大なるもの多し、柏子(びやくしん)といふ木に似て、又杉にも似たり、二種ともに実おほくなるなりといへりき、