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庖厨備用倭名本草
六山果
銀杏(きんあん) 倭名抄に銀杏なし、多識篇今案にいちやう、俗に雲きんあん、考本草一名白果、一名鴨脚子(あふきやくし)、其葉鴨掌に似たり、因て鴨脚と名づく、もとは江南に生ず、宋初に始て入貢す、改て銀杏と雲、其形小杏に似て〓白きが故也、今は白果と雲、梅〓臣詩に、鴨脚類緑李、其名因葉高、欧陽修詩に絳囊初入貢、銀杏貴中州、其樹高さ二三丈、其葉うすく縦理あり、刻欠あり、面みどりにして背あわし、二月に花お開く、簇おなして青白色、夜二更に花お開き、随て即落る、人みる事希なり、一枝に子お百十むすぶ、なりあひ練子(れんし)の如し、霜後に熟す、肉お煉し去て〓お取て果にす、其〓両頭とがる、三稜なるお雄とす、二稜なるお雌とす、其仁わかき時緑色、久しき時は黄になる、雌雄同じく種れば、其樹相望て実おむすぶ、或は雌樹お水に臨て種たるもよし、或は一孔おなし、其内に雄木一塊お入て泥土にてぬりふさぎたるも実お結ぶ、陰陽の妙也、 銀杏味甘苦、性平澀小毒あり、熟して食すれば、人に益あり、肺お温め気お盛し、喘嗽お定め、小便おしヽめ白濁おとヾむ、生にて食すれば疳お引、酒お解し、痰お降し、毒お消し、虫お殺す、外科の用あり、 食禁 多食すべからず、小児多食すれば立どころに死す、是お一千食すれば則死す、むかし飢たるもの銀杏お飽まで食して次日死たり、総じて銀杏と桜桃は、小児には禁じて少も与へざるべし、 合食禁 饅鱧魚と同食すれば、軟風病お生ず、饅鱧魚はうなぎなり、