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草木六部耕種法
十九需実
銀杏(いてう)一名鴨脚子(あうきやくし)、寿の永き木にて極て大木あり、幹直く性堅くして、棟梁の良材なり、実亦菓子と為べく、又煮て羹と為すべし、此木に牝牡の説ありて、其〓二角なるお牝とし、三角なるお牡とす、其牡種お植たるは、実お結こと無しと雲ふ、然れども我家にて此お植るには、種子の牝牡に拘ること無し、何となれば、栽て其幹笛竹の大に至れば、即引切て良木お接木するお以なり、実に無用の弁とは是なり、 此お植る法は、十月能く熟して大なる実お採り集めて、其殻肉共に溝泥中に埋め置き、翌年春分後に取り出し、肥地に一尺の間に一粒づヽ植え、其苗長じたるお、翌年植地に移し栽て、苗竹の太に及びたる時に切て砧木と為し、能く実お結ぶ、銀杏樹の南枝お採て接木すべし、能く培養するときは、七八年の中に必ず実お結ぶ者なり、且此木は年数お経るに従ひ極て繁り、大木と成るお以て、其栽る場処お前方より能く心得べし、