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大和本草
十一園木
羅漢松(いぬまき) 閩書の南産志に出たり、古歌によめるまきと雲は杉なり、まきの葉まきの戸などよめり、日本の古書柀おまきと訓ぜり、柀は字書曰杉也、然らば杉お古にまきと雲るならん、杉おまきと雲に対して、羅漢松は犬まきと雲、今は隻まきと称す、故実お失へり、西州にはくさまきと雲、其臭くさければなり、犬まきの木、其実大にして小指の如く長くして、人の形に似て僧の袈娑かけたるが如し、故に羅漢の名あり、実の色黄赤也、日本紀、旧事記、順和名抄には、皆柀おまきと訓ず、和名抄曰、柀木名埋之能不腐者也、又日本紀旧事紀にも、柀お用て棺に作るべき事おいへり、久しく朽ざる故なるべし、本草に柀といへるは榧なり、然れば柀の字彼是倭漢通用せり、今案杉及羅漢松の大木の必お以、棺に作れば、久しく朽ず、小木は早く朽つ、水土の中に入れば久しく不腐、土外に顕れたるは早くくさる、笳(まへはた)と雲ものは羅漢松の皮なり、船のすきまおふさぐもの也、木〓山より出づ、