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倭訓栞
前編十九那
なぎ〈◯中略〉 著聞集に成通卿熊野に詣て蹴鞠ありしに、夢中になぎの葉一枚得てまもりにこめて持たれし事おしるし、保元物語に、きりめの王子のなぎの葉お、百度千度かざさんとこそおぼしめすと見え、夫木集に、熊野の事およめる歌に、なぎの葉にみがける露など見えたり、熊野にてなぎお尊ぶは、伊奘諾尊より出たるなるべし、此は樹になぎと称するもの也、葉お力柴といふ、きれがたし、其葉水葱に似たるよりいふなるべし、平家物語に栴およめれど、竹柏也といへり、或は梛およむは二合の意、本義にあらず、簠簋には〓およみ、又椥およめり、山城宇治郡に椥(なきの)辻といふ村あり、