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重修本草綱目啓蒙
二十二夷果
榧実 かや〈かやりに用ゆ故に名く〉 一名香実〈行厨集〉 棐実〈事物異名〉 火榧〈会稽賦〉深山に多し、大木なり、葉は樅(もみの)葉に似て厚く、端尖て刺あり、深緑色冬お経て凋まず、雌雄の別あり、雄なる者は枝立て花さく、雌なる者は枝横に茂り下垂す、実ありて花なし、実は長さ一寸許にして、棗の形の如し、皮緑色肉に脂多し、内に〓あり、淡褐色にして厚し、形長して両頭尖る、〓お破ればしぶかは白仁お包む、仁お採て食ふ、しぶかは離れ難き者は常品なり、和州芳野山より出るお名産とす、吉野がやと呼ぶ、又紀州高野山〓州能瀬村よりも出す、一種しぶなしがやあり、しぶ皮〓に著て仁に著かず、故にはちのことも呼ぶ、濃州多良、及伊州上野にもあり、伊州方言しろがや、又一種形円なる者あり、勢州桑名に産す、凡榧材は性堅し、碁枰将棊枰等に用ゆ、一種はだかヾやあり、外皮のみにして、内の〓〓なくして仁あり、丹波八上磯宮寺の産なり、