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重修本草綱目啓蒙
二十一山果
楊梅 やまもヽ 一名楊家果〈事物異名〉 楊氏子 竜晴 火実〈共同上〉楊果〈尺牘双魚〉 鶴頂紅〈蔬果争奇〉 鶴頭紅 楊家之果〈共同上〉 火斉〈行厨集〉 金丸〈事物紺珠〉 日精 曹公〈共同上〉 庭院に多く栽ゆ、自生は暖国に多く、寒地には少し、木は大にして聳へ高く、或は四傍に婆娑す、葉は細長く、瑞香葉に似て粗き鋸歯あり、深緑色冬凋まず、春葉間に黄白色の花お著く、長さ六七分、松の花に似たり、別に実お生ず、形苺子(いちご)の如し、大さ三四分にして円なり、初め緑色、六月に熟して紫赤色生食す味甘し、又塩蔵して酒の芼(さかな)とす梅醤(むめず)に漬せば、色赤して美はし、炒豆に反すと雲ふ、又一種熟して白色なる者あり、しろもヽ(○○○○)と雲、泉州の日根及び河州の甘南備村にあり、形大にして味優れり、漢名水精楊梅〈五雑俎〉釈名の註に、白楊梅為聖僧と雲ふ是なり、女南甫史に聖僧梅に作る、木皮お薬とす、楊梅皮と雲、俗にもヽかわと呼ぶ、染家には褐色お染むるに用ゆ、然れども布帛よはくなると雲、京師工は北山及江州より多く出す、