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草木六部耕種法
十九需実
楊梅(やまもヽ)は種類頗る多く、実にも紅紫(○○)、白の三色(○○○○)有り、大なる者は味美く、小者は味宜からず、其三色中に於て、白者は殊更に甘美なり、其実野梅の大なる者あり、是お最上品とす、又花早く発く者は実お結ぶこと無し、是お花楊梅(はなやまもヽ)と名く、又葉細に木縮る如く、実小にして味酸者あり、此お松楊梅(○○○)と名く、此両種は下品なり、栽ること勿れ、元来楊梅は山果にて、山中なるは其実豊熟し、家園なるは豊熟すること希なる者なり、楊梅は山中に栽るには良種お栽れば、其儘に成長せしむるも宜し、家園及畑地に栽るときは接木すべし、種子お植法は、五月能く熟たる良種お撰び集て、糞壺中に漬け置き、数日の後其の〓お肥土に混て古筵に包み、湿はず燥ざるやうに貯へ置て、翌年二月墳土お細に耕し、間遠に蒔て糞苴お和たる土お七八分も覆ひ、少し押し付く置き、時々泔水お澆て此お潤し、芽出苗の長ずるに従ひ草お去て、此お成長せしめ、一尺以上に至り、翌春植地に移し植え、四五年お経て苗竹の太さに及たる時、引き切りて砧となし接木すべし、