[p.0157]
筆のすさび

一柳に数種ある事 予〈◯菅茶山〉が熟に柳三種あり、一は京の下河原に摘星楼とて、六如上人の房の庭にありし柳の枝おさせるなり、もと絮綿多かりしが、水土によればにや、今はすくなし、一は蘇州府の種とて、長崎の徳見茂四郎より送り来る、一は蜀柳とて、荒木為五郎より得たり、此柳は西洞院風月入道殿、主上より賜はりしおわかちて平松宗致に給ふ、宗致備中松山人ゆえ故郷へもわかち植えたるなりといふ、荒木は松山人なり、予と善し、〈蜀柳は近頃枯れたり〉