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古今著聞集
十九草木
二品〈時賢卿〉の綾小路壬生の家に、鞠のかヽりに、柳三本有けり、其内戌亥のすみの木に、烏すおくひ侍けるお、いかヾおもひけん、其からす其すおはこびて、むかひの桃の木につくりてけり、人々あやしみあへりけるほどに、一両日お経て、関白殿より柳おめされたりけり、二品其時他所にいられたりける程成ければ、御つかひにむかつて、御教書お付たりければ、すみやかにむかひて、いづれにてもはからひてほりて参るべきよしいひければ、御つかひ、かのていにむかつて、其柳のうち二本おほりて参うち、からすのすくひたりし木おむねと堀てけり、烏は此事おかねてさとりけるにこそ、此木一条殿にうつされたりけるが、二本ながらかれにけり、それに本所に今一本残りたるも、同かれにける、おぼつかなき事也、友木かるればかるヽ事にや、ちかく滋野井の柳お一本他所へうつしうへたりけるにも、此定にのこりの木ゆへなくかれたりけるとぞ、