[p.0164][p.0165]
重修本草綱目啓蒙
二十四喬木
樺木 かばのき(○○○○)〈信州〉 くさヾくら(○○○○○) かんば(○○○) うだいまつ(○○○○○)〈共同上〉 しらかば(○○○○)〈奥州〉 ほんごうざくら(○○○○○○○) やてらし(○○○○)〈共同上〉 一名靴皮木〈物理小識〉 樺桃〈〓苑詳註〉 鵲樺皮〈明一統志〉信州甲州に多し、凡そ東北国に多して、西南の国には無し、移し栽ゆるも枯れ易し、葉は桑葉に似て、円ならずして尖り鋸歯あり互生す、春新葉出て後葉間に穂お出す、長さ一寸余、四月に至て細花お開き穂お成す、白色、後実お結ぶ、冬に至て熟す、実は小薄片多く重り、闊四五分、長さ一寸許、下垂す、片ごとに小子あり、落て生じ易し、葉は霜後に落つ、樹皮白して黒斑あり、好事者全皮お用て承塵とす、皮に横理ありて桜皮に同じ、他木皮の縦理なるに異なり、故に竪に切て全皮お横に剥取るべし、皮お剥ぎ去れば其樹愈長ず、其皮外の粗皮お去る時は、幾重にも薄くへげ、浅褐紅にして白斑あり、土人採て色紙短策に作り、或は書の表紙となし、又笠に作り、或は物お包〓し竹籜に代ゆ、又この皮能くもゆる者故に、雨中の炬火に作り、或は鸕鶿お使て魚お捕る時の火把とす、故に信州にてうだいまつと雲、皮に脂多き故、水中に入りても火滅せず、又甲州徳本の無尽蔵に樺皮お多く用ゆ、故に今世に用ゆる者多し、此お焼ば臭気あり、故にくさヾくらと呼ぶ無尽蔵に樺お隠して華に作る、通雅にも樺お華に作り、又華に作ることお雲へり、かばの品類多し、今茲に略す、