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草木育種後編
下薬品
樺〈本草〉 俗にしらかばといふ、深山に生ず、和蘭べるけん、ぼーむといふ、前編已に其有用の事おいふ、皮は松明となすべし、放翁の雨中の詩に、樺炬如椽点不明といふ、われ中土にても炬となす、雨中にもよく燃る事知るべし、又春月芽お生ずるの比、木に穴お明け、竹の管おさし、これに壜お付て置ば、自然と津液お滲溜て、壜中にたまるものお薬用とすべし、内服して小便お利し、血中の汚液お除て、木材葉皮皆水に煎じ服すれば、汚血お駆る事液と効同じ、或は葉お炒未(いりこ)となし、水お加へて灰汁とし、腮頤に樒れは髭お生ず、又栖(きのこ)は血止の薬とすべし、痔血などに外敷(つけ)てよし、山の黒き地にて、外の草木の生ぜざる処にても生長す、故に山野ともに植てよし、山中にて実生おとり、其年の秋に分け植べし、根へ木の葉馬屎等お入てよし、