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甲斐国志
百二十三産物及製造
一樺〈和名加波又加仁波〉 本草釈名に樺木作〓、玉篇雲、樺木皮名、可以為〓炬者也、和名抄木具類に載せたり、加波とは皮の訓なるべし、或雲茶褐色と雲は、因此皮色呼ならんと、徳本の薬方に樺皮散あり、雲華者も蓋以此皮製と雲、樺為樹名者非なり、先儒の説粉々一ならず、本州に所用は雨中の炬火とし、駆鸕鶿為川漁者の燭とするは、河内領の諸山に多し、桜類にして麤木也、花も所観なし、凡そ桜の皮は外は横に理あり、内皮は縦なり、此樹も同じ、故かば桜又かつばの木と呼べり、剥外皮為炬べし、葺屋には皮お薄く剥ぎ葺て、其上に小石お並べ置くなり、能く久きに耐ふ、信州にてかんばの木、又白はりとも雲は、榿(はりのき/はんのき)の一種にて、毎年外皮自ら剥る木なり、皮色は外白し、葺屋に良品なり、本州の川浦武川の諸山及び信州に多し、赤杉檜の皮にても屋お葺けり、樺(かば)どうらん 桜の樹お伐り水に浸すこと度あり、随大小頭切( /づんぎり)して丸ながら皮お抜き、蓋及び底おりて器とし、烟草入に用ふ、円あり、方あり、六角八角にも造り、長も平も皆大小あり、工産の一品とす、是には多く山桜、彼岸桜の樹お用ふれども、何れの桜にても可なりと雲、