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古今要覧稿
草木
はしばみ〈榛〉 はしばみ、灌木にして、大なる物としても、七八尺より長きはなし、一株より叢生して繁茂す、花は未秋葉の落ざる時より萌して、極月の頃五六分になりたる時より挿花に用、是もながはしばみは花も長じ、共にひらくは啓蟄より春分にいたりて、鮮黄にして、凋にいたつて褐色にいたる、後葉お生ず、是も其芽は深紅にして、長ずれば青し、此葉節多くして皺の如し、故にはしばみといへり、たれさがる花も多くあれども、是は花実時お同ふせず、実お結ぶものは元より花おなさず、五六月の頃小なる苞お生じて、七八月に至て熟す、近郷にては下総小金つヾきの山野に自生するものは十果皆実のりて、空殻なるは希なりといへり、