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甲斐国志
百二十三産物及製造
一栗 州中所在皆ありと雖も、栗原筋最饒して、且佳なるには不及、栗林には租あり、就中三日市場村は古時伊丹播磨守の治所お建し処なり、領内の村お併せ呼て十組と雲、〈古武鑑等作徳美〉毎年開市商人競集りて定栗価、今尚例とす、三日市為第一、小原為第二、他村は次第に低折す、大抵甲金拾両に三拾俵〈但し壱俵は三升桝弐斗入り〉より四拾俵なり、打栗は蒸して去皮載木盤、上下に竹皮お藉て、以小槌打平らめ、薄く円ならしむ、大如小児掌、乾して聚十枚為把、十把為一匡、五把為半匡、或は兼大なる匡あり、以售四方、本州の名産とす、味甜美なり、今も例年十一月、府中藩鎮より献之、搗栗( /かちくり)は灰汁に浸すこと一夕、〈焼早稲藁為灰〉日乾して搗て去皮、其形全而不毀お善とす、方言滋味久利(じみくり)と雲、栗の種類甚多し、大なるは味劣れり、山中に生ずる茅栗( /しばくり)と雲は、細小にして不充用、