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倭訓栞
中編二伊
いちひ 櫧お訓ぜり、最火(いちひ)の義、薪となすによし、よて外宮の御饌お炊くに櫟のみお用う、又此木の癭中の松脆なるものおもて、火口に用う、日本紀、古事記、万葉集、新撰字鏡、和名抄皆同じ、又赤梼おも日本紀に訓ぜり、されど甜櫧也といへり、いちひかしのみおくひものにせし事、閑居友に見えたり、かしは苦櫧也、類聚国史に櫟原野見ゆ、山城愛宕郡にあり、今市原村といふ、葛野郡櫟谷神社式に見ゆ、上山田村の北櫟谷にませり、為家卿 大井川しぐるヽ秋のいちひだに山や嵐の色おかすらん 允恭紀に食于櫟井上、古事記に壱比韋臣あり、字鏡にまた〓又枸お訓ぜり、されば枸〓おもてむかしはいちひに充たるにや、和名抄に櫟梂いちひのかさと見えたり、