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新編常陸国誌
六十一土産
柞(くぬき) 山野所々にあり、以て薪とす、風土記行方郡条雲、当麻郷野之土埆、然生紫草、有香島香取二神子之社、其周山野櫟柞栗柴(いちいはヽそくりしば)往々成林、猪猴狼多住雲々、又有波都武之野、野北海辺有香島香取之神子之社、土塉、櫟柞楡(いちいはヽそにれ)〓一二所生雲々、按に和名抄草木之部には、柞お由之とよみ、又漢語抄お引て波々曾と訓ぜり、新撰字鏡には奈良乃木又志比とよめり、和名抄の郷名に筑前糟屋郡に柞原郷ありて、久波良とよめり、〈今は久原村と雲、〉これくにはらの約なること知べし、然れば草木部にくぬきの訓なけれども、当時其訓ありしこと論おまたず、且風土記の文によりて、当麻の地辺お撿するに、ならくぬきの類多くあり、波々曾と雲ものなし、然る時は風土記の柞は、くぬきなること明なり、人多く焼木に用ゆ、